残業代の計算方法|割増率の全パターンと基礎時給の出し方をわかりやすく解説【2026年】
残業代は「基礎時給 × 残業時間 × 割増率」で計算します。月給30万円・月平均所定労働時間160時間の場合、基礎時給は1,875円。法定時間外労働1時間あたり2,344円(25%割増)です。時間外+深夜なら2,813円(50%割増)、法定休日なら2,531円(35%割増)になります(2026年・労働基準法第37条準拠)。
残業代計算の基本公式
残業代の計算は、実はシンプルな掛け算です。
残業代 = 基礎時給 × 残業時間 × 割増率
この3つの要素さえわかれば、自分の残業代が正しく支払われているか確認できます。順番に見ていきます。
基礎時給の出し方
残業代の土台になる「基礎時給」は、月給をそのまま使うわけではありません。
基礎時給 =(月給 − 除外手当)÷ 月平均所定労働時間
月平均所定労働時間とは
会社の年間カレンダーで決まる「1年間の所定労働時間を12で割った値」です。
月平均所定労働時間 =(365日 − 年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12
年間休日が125日、1日の所定労働時間が8時間の会社なら: (365 − 125)× 8 ÷ 12 = 160時間
年間休日が105日の会社なら: (365 − 105)× 8 ÷ 12 = 173.3時間
同じ月給でも、年間休日が少ない会社のほうが月平均所定労働時間が長くなるため、基礎時給は低くなります。つまり残業代の単価も下がる。年間休日の多さは、残業代にも影響するわけです。
除外できる手当は7つだけ
月給から差し引ける手当は、労働基準法施行規則第21条で7つに限定列挙されています。
- 家族手当(扶養人数に応じた支給のみ)
- 通勤手当(実費に応じた支給のみ)
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(住宅費用に応じた支給のみ)
- 臨時に支払われた賃金
- 賞与など1か月超の期間ごとに支払われる賃金
ここで注意が必要なのは、名前が「住宅手当」でも全員一律2万円のように定額支給されている場合は除外できないということ。除外できるのは「住宅の賃料に応じて○%」のように実費に連動している場合だけです。家族手当や通勤手当も同じルールです。
「役職手当」「資格手当」「営業手当」などはこの7つに含まれないため、名前にかかわらず基礎時給の計算に含めなければなりません。
割増率の全パターン一覧
労働基準法第37条で定められた割増率は以下のとおりです。
単体パターン
| 種類 | 条件 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)超 | 25%以上 |
| 時間外労働(月60時間超) | 月の時間外労働が60時間を超えた部分 | 50%以上 |
| 深夜労働 | 22:00〜翌5:00の労働 | 25%以上 |
| 法定休日労働 | 法定休日(週1日)の労働 | 35%以上 |
複合パターン
| 組み合わせ | 割増率 | 計算 |
|---|---|---|
| 時間外 + 深夜 | 50%以上 | 25% + 25% |
| 月60時間超 + 深夜 | 75%以上 | 50% + 25% |
| 休日 + 深夜 | 60%以上 | 35% + 25% |
ひとつ意外なのは、法定休日に8時間を超えて働いても「時間外」の25%は上乗せされないこと。法定休日は1日全体が「休日労働」扱いになるため、何時間働いても35%のままです(深夜帯に入れば+25%で60%)。
月60時間超の50%割増 ── 中小企業にも適用済み
2023年4月から、中小企業を含むすべての企業で月60時間超の時間外労働に50%以上の割増率が義務化されています。以前は中小企業は猶予されていましたが、この猶予はすでに廃止済みです。
具体的な計算例
例1:月給30万円・残業20時間の場合
条件:月給30万円(除外手当なし)、月平均所定労働時間160時間、時間外残業20時間
基礎時給 300,000 ÷ 160 = 1,875円
時間外割増単価 1,875 × 1.25 = 2,344円
残業代 2,344 × 20時間 = 46,875円
月給30万円の方が20時間の残業をすると、約4.7万円の残業代がつく計算です。
例2:月給30万円・時間外30時間+深夜10時間+休日8時間
条件:同じ月給30万円、所定労働時間160時間
| 種類 | 割増率 | 単価 | 時間 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 時間外(25%) | 1.25 | 2,344円 | 30h | 70,313円 |
| 深夜(50%) | 1.50 | 2,813円 | 10h | 28,125円 |
| 休日(35%) | 1.35 | 2,531円 | 8h | 20,250円 |
| 合計 | 48h | 118,688円 |
残業代だけで約12万円。月給30万円に対して4割近い金額です。ご自身の残業時間で計算してみたい方は、残業代計算ツールで月給と残業時間を入力すれば自動で算出できます。
固定残業代(みなし残業)の落とし穴
「月30時間分の固定残業代5万円を含む」──求人票でよく見るこの表記。これは30時間分の残業代が給与に含まれているという意味ですが、注意すべき点があります。
超過分は必ず追加で支払われる
固定残業代に含まれる時間を超えて残業した場合、超過分の残業代は別途支払われなければなりません。これは労働基準法上の義務です。
例えば、固定残業代が月30時間分で含まれていて、実際に40時間残業した場合、超過10時間分の残業代が追加で発生します。
有効要件を満たしていない固定残業代は無効
最高裁判例(日本ケミカル事件・2018年)により、固定残業代が有効であるためには:
- 基本給と固定残業代が明確に区分されていること
- 固定残業代が時間外労働の対価として支払われていること
- 超過分の差額が精算されること
この3つを満たさない固定残業代は無効となり、基本給に含めて基礎時給を再計算した上で、全残業時間分の残業代を別途支払う義務が生じます。
自分の固定残業代が適正か気になる方は、残業代計算ツールで「固定残業代」欄に金額を入力すると、実際の残業代との差額が確認できます。
36協定の上限時間
会社が従業員に残業させるには、「36協定」(労使協定)が必要です。この協定にも上限があります。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則(月) | 45時間 |
| 原則(年) | 360時間 |
| 特別条項あり(年) | 720時間以内 |
| 特別条項あり(単月・休日含む) | 100時間未満 |
| 2〜6か月平均 | 80時間以内 |
| 月45時間超の回数 | 年6回以内 |
2019年4月(中小企業は2020年4月)から、この上限に違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が適用されています。
よくある間違い・見落としポイント
法定内残業と法定外残業の違い
会社の所定労働時間が7時間の場合、7時間を超えて8時間まで働いた1時間は「法定内残業」で、割増率は発生しません(契約上の残業代は別途)。25%の割増が義務づけられるのは法定労働時間(8時間)を超えた分だけです。
月60時間のカウントは法定時間外のみ
法定休日労働は月60時間のカウントに含みません。あくまで「法定時間外労働」が月60時間を超えた場合に50%割増が適用されます。
1分単位で計算が原則
残業時間を15分単位や30分単位で切り捨てるのは、原則として違法です(昭和63年通達)。ただし、1か月の合計残業時間を30分未満切り捨て・30分以上切り上げで丸めることは認められています。
まとめ
- 残業代 = 基礎時給 × 残業時間 × 割増率
- 基礎時給 =(月給 − 除外手当)÷ 月平均所定労働時間
- 除外できる手当は7つだけ(名前ではなく実態で判断)
- 割増率:時間外25%、深夜25%、休日35%、月60時間超50%
- 固定残業代でも超過分は必ず追加支給される
- 月給30万円・20時間の残業で約4.7万円の残業代
自分の残業代が正しいか確認したい方は、残業代計算ツールで計算してみてください。月給と残業時間を入力するだけで、時間外・深夜・休日の各項目と合計額が自動で出ます。年収全体の手取りを知りたい方は手取り計算ツールもあわせてどうぞ。
※本記事は労働基準法第37条に基づく一般的な解説です。個別の労働条件や未払い残業代に関するご相談は、社会保険労務士や弁護士、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
管理用メモ
出典リスト
- 労働基準法第37条(割増賃金) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
- 労働基準法施行規則第21条(除外手当) 同上
- 厚生労働省 割増賃金の基礎 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/tingin/
- 厚生労働省 月60時間超の割増賃金 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zangyou/index.html
- 最高裁 日本ケミカル事件(H30.7.19)固定残業代の有効要件
計算例検証記録
| # | 記事の記述 | ツールに入力した条件 | ツールの出力 | 一致 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 月給30万・160h→基礎時給1,875円 | 月給300,000/所定160h | 基礎時給1,875円 | ✅ |
| 2 | 時間外20h→残業代46,875円 | 同上+時間外20h | 46,875円 | ✅ |
| 3 | 時間外30h+深夜10h+休日8h→118,688円 | 同上+各時間入力 | 118,688円 | ✅ |
工具リンク
- fuerumo.com/zangyoudai-keisan/ — 残業代計算ツール
- fuerumo.com/tedori-keisan/ — 手取り計算ツール
- fuerumo.com/bonus-tedori/ — ボーナス手取り計算
来年更新ポイント
- 割増率の法改正有無を確認
- 36協定上限の適用除外業種(建設・運送・医師)の経過措置状況
- 最低賃金改定に伴う基礎時給への影響
ご注意
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士等の専門家にご相談ください。